2021年3月2日火曜日

老人福祉制度の発展~老人医療費の無料化

今日の高齢者施策の中心をなす法制度は,介護保険法です。


社会保障制度審議会の1962年勧告で示されたように,社会保険制度は,国民の大多数を占める一般所得層を対象とするものだからです。


しかし,社会福祉士が社会福祉のプロフェッショナルであるなら,社会福祉制度である老人福祉法は必ず押さえておかなければならないものでしょう。


老人福祉制度の発展に関する記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2018/01/blog-post_21.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2020/10/blog-post_3.html


それでは今日の問題です。


第28回・問題127 次の記述のうち,老人福祉法において規定されたことのある制度や事業として,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,自らが行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に関する計画を定める。

2 70歳以上の者で国民健康保険の被保険者又は被用者保険の被扶養者であるものに対して,その医療保険自己負担額を公費で支給する。

3 1961年(昭和36年)4月1日において,50歳を超える者等についてその者が70歳に達した時から老齢福祉年金を支給する。

4 高齢者専用賃貸住宅を設置し高齢者を入居させ,日常生活を営むために必要な福祉サービス等を提供する。

5 シルバー人材センター事業を実施し,高年齢退職者の希望に応じた就業で,臨時的かつ短期的なものや軽易な業務に係るものの機会を確保しその就業を援助する。


この問題は,それぞれの文章に誤りはないのに,根拠法が違うので間違いとなっています。


この問題を作った試験委員のセンスの高さを感じます。


しかも勉強した人なら正解がわかりやすいですが,勉強不足の人が正解するのはとても難しいものでしょう。


知識がなくても日本語的に消去できるような問題は,受験者に差がつかないので不適切なのです。


さて,正解は選択肢2です。


2 70歳以上の者で国民健康保険の被保険者又は被用者保険の被扶養者であるものに対して,その医療保険自己負担額を公費で支給する。


1973年(昭和48年)の老人医療費の無料化に関する記述です。


老人医療費無料化は,高齢者福祉の発展の中では重要なもののうちの一つです。


そのあと,老人医療費の高騰を招き,老人保健法によって一部負担ができましたが,高齢者が家族に気兼ねして医療を受けないという悲しい出来事はなくなりました。


医者にかかるのは死んだ後だけ(亡くなると医師に死亡診断書を書いてもらわなければなりません)というのは,あまりにも悲しすぎると思いませんか。


それでは,そのほかの選択肢も確認します。


1 市町村は,自らが行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に関する計画を定める。


これは介護保険法の規定です。


3 1961年(昭和36年)4月1日において,50歳を超える者等についてその者が70歳に達した時から老齢福祉年金を支給する。


これは国民年金法の規定です。


わが国は,国民皆年金制度ですが,国民年金法で無拠出の老齢福祉年金や母子年金などが規定されたことで,皆年金は皆年金となったのです。


母子年金に関する記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/12/blog-post_24.html


国民年金法では,無拠出でも受給できるものがありますね。


20歳から40年間以上にわたって生活保護を受給している人の老齢基礎年金

20歳前に初診日がある傷病に関しての障害基礎年金


もしかするとこのほかにもあるかもしれませんが,思い浮かぶのはこの2つです。


4 高齢者専用賃貸住宅を設置し高齢者を入居させ,日常生活を営むために必要な福祉サービス等を提供する。


高齢者専用賃貸住宅(高専賃)を規定していたのは,「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法)です。


同法の2011年(平成23年)の改正によって,高齢者専用賃貸住宅等は廃止され,その代わりに「高齢者向けサービス付き住宅」(サ高住)が創設されています。


5 シルバー人材センター事業を実施し,高年齢退職者の希望に応じた就業で,臨時的かつ短期的なものや軽易な業務に係るものの機会を確保しその就業を援助する。


これは,高年齢者雇用安定法の規定です。



<今日の一言>


福祉現場で実際に働いている人は,自分の領域は点数が取れると思っていると痛い目に遭います。


ちょっと有利だという程度で,圧倒的にアドバンテージがあるわけではありません。


たとえば,高齢者の科目の出題の中心は,介護保険法ですが,そのほかにも老人福祉法をはじめとして覚えなければならない法制度が多くあります。


確実に合格するためには,ソーシャルワーク系の科目もそうですが,すべての科目をまんべんなく勉強することが欠かせません。

とは言うものの,現場で働く人は,そのようなベースを持たない学生よりも有利であることは間違いありません。

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