わが国の介護保険制度は,準市場(疑似市場)が採用されています。
一部のサービスを除き,自由に市場に参入することができます。
しかし,サービス提供の対価は,国が決めた公定価格です。
そこが自由市場と異なるので,準市場と呼ばれる所以です。
自由市場であれば,需要と供給のバランスによって,価格が決定されるものです。
これをアダムスは,「神の見えざる手」と呼びました。
しかし,理想通りにならないのは世の常です。
業者が闇カルテルを組んで結託すれば,市場原理は働きません。
そこで,介護保険制度は,自由市場の要素を取り入れながらも計画経済の要素を取り入れているのです。
そのおかげで,全国どこでサービスを受けようが,どのサービス事業者が提供するサービスを利用しようが,基本的には同じ価格です。
実際には,地域での価格差や各種加算などによって価格は変化しますが,基本価格は一緒です。
介護保険の場合,提供するサービスの公定価格のことを介護報酬といいます。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題131 介護保険制度における介護報酬(介護給付費)と利用者負担に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護報酬の1単位の単価は,全国一律に定められ,地域による割増しはない。
2 介護報酬の算定基準を厚生労働大臣が定める際には,あらかじめ内閣総理大臣の意見を聴かなければならない。
3 居宅介護サービスにおける支給限度基準額を超えて介護サービスを利用する場合には,その超えた費用は全額が利用者負担となる。
4 施設サービスにおける食費と居住費は,生活保護の被保護者を除く市町村民税非課税世帯などの低所得者も全額の自己負担が求められる。
5 介護報酬は,2年に1回改定される。
この問題を見て,「あれっ」と思った人は勉強がかなり進んでいる人でしょう。
第33回国試では以下のように出題されました。
第33回・問題131 介護保険制度における保険給付と介護報酬に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護報酬の算定基準を定める場合,厚生労働大臣はあらかじめ財務大臣及び総務大臣の意見を聴かなければならないこととなっている。
2 特定入所者介護サービス費は,介護保険施設入所者のうちの「低所得者」に対し,保険給付にかかる定率負担の軽減を図るものとなっている。
3 介護報酬の1単位当たりの単価は10円を基本とした上で,事業所・施設の所在地及びサービスの種類に応じて減額が行われている。
4 要介護度に応じて定められる居宅介護サービス費等区分支給限度基準額が適用されるサービスの種類の一つとして,短期入所療養介護がある。
5 福祉用具貸与の介護報酬については,貸与価格の下限の設定が行われることとなっている。
(注) 「低所得者」とは,要介護被保険者のうち所得及び資産の状況などの事情をしん酌して厚生労働省令で定める者のことである。
第28回とかなり内容が重なっています。
国家試験は,
少しずつ重なっていて,少しずつ違う
だから適度に難しくなります。
第33回の問題の答えは,4です。
この問題の詳しい解説はそのうちにするとして,第28回の問題を見てみましょう。
1 介護報酬の1単位の単価は,全国一律に定められ,地域による割増しはない。
診療報酬は全国一律ですが,介護報酬は地域差が設けられています。
2 介護報酬の算定基準を厚生労働大臣が定める際には,あらかじめ内閣総理大臣の意見を聴かなければならない。
介護報酬の算定基準を厚生労働大臣が定める際,あらかじめ聴かなければならないのは,社会保障審議会介護給付費分科会です。
3 居宅介護サービスにおける支給限度基準額を超えて介護サービスを利用する場合には,その超えた費用は全額が利用者負担となる。
これが正解です。
介護保険サービスは,誰もが受けることができます。
サービスにかかったお金を保険給付するための仕組みが,要介護認定です。
支給限度基準額とは,この金額までを保険給付するためのものです。それを超えた分は保険給付されないので,自己負担となります。
4 施設サービスにおける食費と居住費は,生活保護の被保護者を除く市町村民税非課税世帯などの低所得者も全額の自己負担が求められる。
施設サービスにおける食費と居住費に対して,低所得者の場合は,特定入所者介護サービス費が給付されます。
5 介護報酬は,2年に1回改定される。
介護報酬の改定は3年に1回です。