児童領域には,児童福祉施設や児童福祉事業など,数多くの社会資源があります。そのため,覚えるのが大変ですが,しっかり押さえておきたいです。
今回は,児童福祉事業の一つである「児童自立生活援助事業」を取り上げたいと思います。
対象 |
義務教育終了後、児童養護施設、児童自立支援施設等を退所し、就職する児童等。 |
事業内容 |
①就労への取り組み姿勢及び職場の対人関係についての援助・指導 ②対人関係、健康管理、金銭管理、余暇活用、食事等日常生活に関することその他自立した日常生活及び社会生活を営むために必要な相談・援助・指導 ③職場を開拓するとともに、安定した職業に就かせるための援助・指導及び就労先との調整 ④児童の家庭の状況に応じた家庭環境の調整 ⑤児童相談所及び必要に応じて市町村、児童家庭支援センター、警察、児童委員、公共職業安定所等関係機関との連携 ⑥自立援助ホームを退居した者に対する生活相談など |
この中にある「自立援助ホーム」で生活しながら援助を受けます。
自立援助ホームの名称には「児童」が含まれていないので,注意が必要です。
特に更生保護制度の「自立準備ホーム」と名称が似ているので,区別して覚えます。
さて,今日の問題は,事例です。
事例問題はポイントを見誤ると間違えるので注意が必要です。
第28回・問題142 事例を読んで,A子に対する児童相談所の援助方針として,次のうち最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
A子(18歳)は,高校入学を機にU児童養護施設から母親に引き取られた。しかし家庭内が落ち着かないため深夜徘徊したり,学業不振や欠席が続き,最近,高校を中退した。これを知った母親の内縁男性がA子を殴り,鼻骨骨折を負わせたが,親権者である母親はA子に対し「殴られて当然」「あなたが反省すべきだ」と主張した。そこで,A子は児童相談所に相談し「いつも男性に殴られていた」「母は守ってくれないから,男性がいる家では暮らしたくない」「働いて自立したい」と訴えた。
1 成年に達するまでは,自宅で生活するよう説得する。
2 配偶者暴力相談支援センターを紹介する。
3 児童自立生活援助事業の活用を図る。
4 U児童養護施設に再入所させる。
5 更生保護施設に入所させる。
この問題は,国家試験のあとに出される各社の解答速報では答えが割れました。
答えは明確だと思うのですが,解答速報を出す会社でもポイントをつかみ損ねると間違うものです。
〈絶対に正解にならないもの〉
1 成年に達するまでは,自宅で生活するよう説得する。
「説得する」は,ソーシャルワークではありません。
〈法制度の知識が必要なもの〉
2 配偶者暴力相談支援センターを紹介する。
5 更生保護施設に入所させる。
選択肢2の「配偶者暴力相談支援センター」は,DV防止法で規定されるものです。多くの場合は,売春防止法の婦人相談所が配偶者暴力相談支援センターの機能を兼ねています。
選択肢5の「更生保護施設」は,更生保護事業法で規定されるものです。
いずれもA子とは関係ないと言えます。
〈解答解説の正当が割れたもの〉
3 児童自立生活援助事業の活用を図る。
4 U児童養護施設に再入所させる。
正解は,選択肢3です。
児童養護施設の退所後なので,「児童自立生活援助事業」の対象です。
選択肢4が正解にならないのは,選択3よりも適切ではないからです。
児童養護施設への再入所では,「働いて自立したい」というA子の希望を満たす要素がないのです。
ここに着目すれば「児童自立生活援助事業の活用を図る」しかあり得ません。
<今日の一言>
事例問題は,多くの人が思っているほど簡単ではありません。確実に正解するには,解く訓練が必要です。