今回は,保護観察官と保護司を取り上げます。
更生保護制度に取り組むたびに取り上げていますが,それほど重要であり,繰り返し出題されているということです。しっかり覚えたいです。
保護観察官 |
保護観察,調査,生活環境の調整その他犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に関する事務に従事する。 |
保護司 |
保護観察官で十分でないところを補う。 |
このように保護観察官と保護司の役割分担は,法に規定されていません。
なお,それぞれの根拠法は,保護観察官は「更生保護法」,保護司は「保護司法」です。
保護観察は,保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として,権力的性格の「指導監督」と福祉的性格の「補導援護」によって行われます。
指導監督の方法 |
・面接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち,その行状を把握すること。 ・保護観察対象者が一般遵守事項及び特別遵守事項を遵守し,並びに生活行動指針に即して生活し,及び行動するよう,必要な指示その他の措置をとること。 ・特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を実施すること。 |
補導援護の方法 |
・適切な住居その他の宿泊場所を得ること及び当該宿泊場所に帰住することを助けること。 ・医療及び療養を受けることを助けること。 ・職業を補導し,及び就職を助けること。 ・教養訓練の手段を得ることを助けること。 ・生活環境を改善し,及び調整すること。 ・社会生活に適応させるために必要な生活指導を行うこと。 ・前各号に掲げるもののほか,保護観察対象者が健全な社会生活を営むために必要な助言その他の措置をとること。 |
それでは,今日の問題です。
第28回・問題148 保護観察官及び保護司に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保護観察官の職務は,法執行に関わる保護観察の実施であり,犯罪予防活動については,地域社会の実情に精通した保護司の職務とされている。
2 保護観察官が,保護司なしに直接,保護観察事件を担当することはない。
3 保護司には給与は支給されないが,職務に要した費用は実費弁償の形で支給されている。
4 保護司は,保護観察官とは異なり,職務上知り得た関係者の身上に関する秘密を尊重する義務はない。
5 保護観察対象者の信教の自由に配意して宗教家は保護司になることが認められていない。
問題づくりが下手な問題です。
知識なしでも消去できる選択肢があるからです。
2 保護観察官が,保護司なしに直接,保護観察事件を担当することはない。
4 保護司は,保護観察官とは異なり,職務上知り得た関係者の身上に関する秘密を尊重する義務はない。
5 保護観察対象者の信教の自由に配意して宗教家は保護司になることが認められていない。
この3つの中で迷うことがあるとすれば,選択肢5でしょう。
しかし,信教の自由があるなら,保護司も同じです。宗教家を排除することは,おそらく憲法に反するのではないかと思います。
選択肢2と4は,
言い切り表現に正解少なし
です。
1 保護観察官の職務は,法執行に関わる保護観察の実施であり,犯罪予防活動については,地域社会の実情に精通した保護司の職務とされている。
保護観察官の職務は,
保護観察,調査,生活環境の調整その他犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に関する事務に従事する。
犯罪の予防も保護観察官の職務の一つです。
それよりも,保護観察官と保護司の職務として,このように役割の線引きはなされません。
ということで,正解は選択肢3です。
3 保護司には給与は支給されないが,職務に要した費用は実費弁償の形で支給されている。
<今日の一言>
この問題は,消去法を使わなくても,答えがわかる問題です。
しかし,こういった問題は極めてまれです。
多くは,消去法を使って答えを探し出します。
なぜなら,国試は,
少しずつ同じで,少しずつ違う
参考書を完璧にマスターしても,過去問や模擬問題集を完璧にして臨んでも,同じようには出題されません。
国試が難しいのは,少しずつ違うからです。
知恵を使って答えを見つけていく問題が圧倒的に多いことを覚えておきたいです。