今回は,更生保護施設を取り上げます。
更生保護施設の根拠法は,更生保護事業法です。
更生保護施設の多くは,同法に規定される更生保護法人によって運営されていますが,運営主体は更生保護法人に限定されているわけではありません。
更生保護施設では,改善更生のための保護を必要としている者に対して,宿泊場所の供与,社会生活に適応させるために必要な生活指導などを行います。
それでは今日の問題です。
第28回・問題149 更生保護施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 更生保護施設は,更生緊急保護の対象者に限って収容保護を行う。
2 更生保護施設の収容期間は,3か月を超えてはならない。
3 更生保護施設は,少年と成人とを別の施設に収容しなければならない。
4 更生保護施設は,被保護者に対して社会復帰のための処遇を実施する。
5 更生保護施設の運営は,社会福祉法人に限定される。
国試の最終盤になって,緊張感あふれる問題です。
もう少しで終わると思ったところで,こんな問題が出題されると考えるのが面倒になってしまうのではないでしょうか。
朝からずっと問題を解き続けてきているのでかなり疲れ切っている場面です。
こんな時こそ,解答テクニックの出番です。
1 更生保護施設は,更生緊急保護の対象者に限って収容保護を行う。
「限って」という表現がなされていますが,意味は「のみ」と同じです。
更生保護施設と言えば,更生緊急保護というイメージが強いかもしれませんが,実はもう一つ重要な役割を担っています。
更生緊急保護は,保護観察に付されているものは対象としない。
これまで何度も出題されてきたことです。
なぜ,更生緊急保護は,保護観察に付されているものは対象としないのか,と思ったことはありませんか?
実は,更生保護法では,保護観察に付されているものに対して「応急の救護」という制度が規定されています。
保護の内容は,更生緊急保護と同じです。
国家試験では,「応急の救護」について出題されたことがありません。出題しないのは意図的なようにも思えます。
整理すると
保護観察に付されているもの → 応急の救護
保護観察に付されていないもの → 更生緊急保護
となります。
更生保護施設は,「応急の救護」も「更生緊急保護」も実施します。
2 更生保護施設の収容期間は,3か月を超えてはならない。
更生緊急保護は,6か月という期限があります(さらに6か月を超えない範囲で延長可能)が,それ以外には期間の定めはありません。
3 更生保護施設は,少年と成人とを別の施設に収容しなければならない。
少年と成人を別の施設に収容しなければならない,という定めはありません。
言い切り表現に,正解少なし
です。
4 更生保護施設は,被保護者に対して社会復帰のための処遇を実施する。
これが正解です。
更生保護施設は,宿泊場所の供与,社会生活に適応させるために必要な生活指導などを行います。これらは,被保護者に対して社会復帰のための処遇です。
5 更生保護施設の運営は,社会福祉法人に限定される。
「限定される」という表現になっていますが,いみは「のみ」と同じです。
<今日の一言>
「のみ」や「すべて」は,正解になりにくいことを多くの人が知っているため,近年はそれらを極力使わないで,問題文がつくられています。
しかし,その亜流は散見できます。「限って」「限定」「全」などがそうです。
こういったところに気がつくことができれば,ミスは減らすことができるでしょう。