2021年3月11日木曜日

児童福祉の発展過程

現時点では直近となる第33回国家試験問題から考えると,今後は人名もしっかり覚える必要がありそうな感じもしますが,近年の国試で人名を覚えなければ解けない問題はほとんどありません。

今日から科目は,「児童・家庭」に入りますが,この科目の児童福祉の発展過程は,人名を覚えなければ解けない問題が出題される数少ない科目の一つです。


それでは,早速今日の問題です。


第28回・問題137 日本の児童福祉の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 恤救規則では,15歳以下の幼者について,人民相互の情宜に頼らず,国家が対応すると規定した。

2 石井十次は,イギリスのベヴァリッジ(Beveridge,W.)の活動に影響を受けて岡山孤児院を設立した。

3 工場法では,18歳未満の者の労働時間を制限することを規定した。

4 児童虐待防止に関する最初の法律は,第二次世界大戦前につくられた。

5 児童憲章は,児童の権利に関するジュネーブ宣言を受けて制定された。


歴史が苦手な人にとっては,とてもいやだなぁと思うような問題かもしれません。


しかし,歴史は出題ポイントが決まっています。しかも法制度のように変わっていくことがありません。


苦手だと思うその心の壁を取り去るとそれほど難しくない問題で構成されています。


それでは解説です。


1 恤救規則では,15歳以下の幼者について,人民相互の情宜に頼らず,国家が対応すると規定した。


近年の問題は,1つの選択肢には,間違いポイントは1か所であるようにつくられていますが,これは珍しく間違いポイントが2つあります。


①対象は13歳以下

②恤救規則の基本は,人民相互の情誼。


法規によって,対象となる児童の年齢を覚えるのは大変ですが,恤救規則(1874年)と救護法(1929年)では共通の13歳であることは押さえておきたいです。


それに対して,高齢者は,恤救規則では70歳以上,救護法では65歳以上と異なります。


2 石井十次は,イギリスのベヴァリッジ(Beveridge,W.)の活動に影響を受けて岡山孤児院を設立した。


石井十次は,岡山孤児院の創設者であることは適切です。


影響を受けたのは,イギリスの孤児院であるバーナードホームを創設したバーナードです。


ベヴァリッジは,1942年に通称「ベヴァリッジ報告」をまとめたベヴァリッジ委員会の委員長を務めた人物です。


バーナードがわからなくても,消去できそうです。


3 工場法では,18歳未満の者の労働時間を制限することを規定した。


日本の工場法(1911年)で,労働時間を制限した児童の年齢は,15歳未満です。


時は明治の時代です。18歳と言えば,働き盛りです。その時代に18歳以下と規定するはずがありません。


児童の年齢を覚えるのはかなり面倒で混乱しがちですが,国家試験では,時代を考えるとそれほど悩むことなく解けるものであることが多いものです。


4 児童虐待防止に関する最初の法律は,第二次世界大戦前につくられた。


これが正解です。


1933年(昭和8年)に,現在の法律とは異なる児童虐待防止法がつくられています。


この時代は,世界大恐慌のあおりを受けて,特に農村部では疲弊していました。


東北地方では,凶作なども重なり,村の若い娘がみんないなくなってしまったことがあります。


そんな時代につくられたのが,戦前の児童虐待防止法です。時代を知るためには,必ず覚えておきたい法制度の一つです。


5 児童憲章は,児童の権利に関するジュネーブ宣言を受けて制定された。


児童憲章は1951年,ジュネーブ宣言は1924年です。時代がかなり異なります。


一見すると正しそうに見えるかもしれませんが,ジュネーブ宣言は,第一次世界大戦後に国際連盟による宣言です。


児童憲章は第二次世界大戦後のものです。

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