今回は,児童虐待防止法です。
児童虐待に関する法制度は,児童虐待防止法と児童福祉法によって体系づけられます。
児童虐待防止法は,保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するもの)からの虐待防止を定めたものです。
児童福祉法では,施設職員等からの虐待防止を定めています。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題139 児童虐待の防止等に関する法律に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 学校の教職員,児童福祉施設の職員,医師保健師,弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者には,児童虐待の早期発見の努力義務が課せられている。
2 偶然通りかかった見知らぬ男性が,児童に対して暴力を振るってケガをさせる行為は,児童虐待に当たる。
3 児童相談所長は,児童虐待を受けた児童の意に反して,一時保護を行うことはできない。
4 児童虐待を行った保護者が,接近禁止命令に違反しても,罰則を科せられることはない。
5 児童虐待を疑った医師が,児童虐待の通告をする場合には,当該児童の保護者の同意を得るものとされている。
おそらくこの問題は,知識ゼロでも正解できるものかもしれません。
なぜなら,正解以外のものは,消去しやすいからです。
第28回国試は,雑な感じがする問題が散見します。
いろいろ考えすぎて,かえって単純になってしまったのかもしれません。
国家試験をつくるというのは,簡単なものではないのです。
それでは解説です。
1 学校の教職員,児童福祉施設の職員,医師保健師,弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者には,児童虐待の早期発見の努力義務が課せられている。
これが正解です。
(児童虐待の早期発見等)
第五条 学校、児童福祉施設、病院、都道府県警察、婦人相談所、教育委員会、配偶者暴力相談支援センターその他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、弁護士、警察官、婦人相談員その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない。
このように規定されます。
児童虐待の実態では,児童相談所の虐待対応が年々増加している,といったことが報道されます。
だからといって,実際に発生している児童虐待が増加しているとは限りません。
関係者に児童虐待の早期発見の努力義務があることが通告を増やしているということもあるように思います。
2 偶然通りかかった見知らぬ男性が,児童に対して暴力を振るってケガをさせる行為は,児童虐待に当たる。
偶然通りかかった見知らぬ男性は,保護者でも施設職員等でもありません。
児童虐待防止法でも児童福祉法でも虐待にはあたりません。
3 児童相談所長は,児童虐待を受けた児童の意に反して,一時保護を行うことはできない。
児童相談所は一時保護を行いますが,児童の意に反しても,一時保護が必要なら保護します。
4 児童虐待を行った保護者が,接近禁止命令に違反しても,罰則を科せられることはない。
もちろん罰則はあります。
5 児童虐待を疑った医師が,児童虐待の通告をする場合には,当該児童の保護者の同意を得るものとされている。
通告に保護者の同意は必要とされません。意味がありません。