2022年1月31日月曜日

キャプランによる予防の概念

 人名は覚える必要はありませんが,危機理論を提唱したキャプランは,予防の概念である予防モデルを提唱しています。

 

今日では,広くさまざまな分野で用いられています。

 

予防モデル 

一次予防

問題を発生させないこと。

二次予防

問題を早期に発見すること。

三次予防

問題を進行させない,問題を再発させないこと。

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題4 健康に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 一次予防とは,疾病の悪化を予防することである。

2 日本の特定健康診査は,メタボリックシンドロームに着目した健康診査である。

3 「健康日本21(第二次)」の基本的方向は,平均寿命の延伸である。

4 現在,日本の死因の第1位は心疾患である。

5 WHOが提唱したヘルスプロモーションは,ヘルシンキ宣言において定義された。

 

国家試験は,

 

少しずつ同じで,少しずつ違う

 

今まで何度も紹介してきた通りです。

 

心が弱くなると,少しずつ違うところにやられてしまいます。

 

落ち着いて試験に臨むことができたなら,正解できるでしょう。

 

しかし,浮足立ってしまうと,間違います。何度も国試にチャレンジして高い壁にはねつけられてしまっている人は,どうしたら合格できるのだろうと思うかもしれません。

 

結論は簡単です。少しずつ同じである部分に着目することです。そうすれば,答えが浮かび上がってくるでしょう。

 

それでは,解説です。

 

1 一次予防とは,疾病の悪化を予防することである。

 

一次予防は,問題を発生させないことです。

 

疾病に関して言えば,


市民に対する健康教室などが,一次予防にあたります。

病気の早期発見のために実施される健康診査は,二次予防にあたります。

疾病の悪化を予防することは,三次予防にあたります。

 

2 日本の特定健康診査は,メタボリックシンドロームに着目した健康診査である。

 

これが正解です。言われてみると「ああ,なるほど。そうかもね」と思うかもしれません。

 

特定健康診査について,メタボリックシンドロームの診断基準を覚えて試験に臨んだ人は多いはずです。

 

それでもこの問題を正解できたかどうかはわかりません。角度をちょっと変えて出題しているからです。これが「少しずつ違う」の部分です。

しかし,すぐこれが正しいかどうかわからないので,この段階では冷静に△をつけます。

 

 

3 「健康日本21(第二次)」の基本的方向は,平均寿命の延伸である。

 

平均寿命の延伸をテーマに取り組むことは,今後もないように思います。

 

重要なことは,人生100年時代を健康に生きることです。

 

つまり「健康寿命の延伸」です。

 

落ち着いて考えるとこんなものを正解にするということは考えられないと思うかもしれません。

しかし,ここが国家試験の怖いところです。普段しないミスをするのです。

この場合は,読み間違いというミスです。自分は,そんなミスはしないよ,と笑っている人は要注意です。

 

4 現在,日本の死因の第1位は心疾患である。

 

日本人の死因の第1位は,がんです。

 

これまで何度も勉強してきたことなのに「どうだったっけ?」と思うことはよくあることです。

 

こういった順位のあるものは,2位以下を問われることはまずないので,1位のものだけを強く覚えることがコツです。

 

地方財政では,民生費がよく出題されています。

 

市町村+都道府県=民生費

都道府県=教育費

市町村=民生費

 

民生費の内訳では,

市町村+都道府県=児童福祉費

都道府県=老人福祉費

市町村=児童福祉費

 

といった具合です。

 

5 WHOが提唱したヘルスプロモーションは,ヘルシンキ宣言において定義された。

 

ヘルスプロモーションが提唱されたのは,オタワ憲章です。

 

オタワ憲章と合わせて覚えるのは,アルマ・アタ宣言です。

 

さまざまな宣言が出てきて混乱しそうですが,だからこそ出題されます。覚えにくいものは,誰もが覚えにくいからです。

 

アルマ・アタ宣言は,プライマリ・ヘルスケアを提唱したことで知られます。

 

ヘルシンキ宣言は,インフォームドコンセントの概念を提唱したことで知られているものです。

2022年1月30日日曜日

ICF(国際生活機能分類)で用いられる用語

ICFは,それまでのICIDHに変わって用いられているものです。

 

まずは,用語を確認します。

  

心身機能

身体系の生理的機能(心理的機能を含む)

身体構造

身体の解剖学的部分

機能障害

心身機能または身体構造上の問題

活動

課題や行為の個人による遂行のこと

参加

生活・人生場面への関わりのこと

活動制限

個人が活動を行うときに生じる難しさのこと

参加制約

個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと

環境因子

人々が生活し,人生を送っている物的な環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境を構成する因子のこと

 

背景因子には,環境因子のほかに個人因子がありますが,ICFでは,社会的・文化的に差があるため,定義づけしていません。しかし,それまでの人生の経験など個人的なものであることには間違いありません。

 

これらのうち,「心身機能・身体構造」「参加」「活動」は,「生活機能」という概念でまとめられています。

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題3 国際生活機能分類(ICF)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 生活機能とは,心身機能,身体構造及び活動の三つから構成される。

2 活動は,能力と実行状況で評価される。

3 活動とは,生活や人生場面への関わりのことである。

4 個人因子には,促進因子と阻害因子がある。

5 参加制約とは,個人が活動を行うときに生じる難しさのことである。

 

「社会福祉士の国家試験は,日本語の問題である」と豪語する人がいます。

 

確かにそういった問題もありますが,それだけでは絶対に合格することはできません。

 

こういった問題を見てもらうとわかりますが,確実な知識が求められます。

 

今の時点(国家試験の1週間前)に,この問題が解ける人は,もうほとんど仕上がってきていると言えます。

 

自信をもって良いです。

 

 

さて,解説です。ポイントは,「活動」と「参加」を整理して覚えていることです。

 

1 生活機能とは,心身機能,身体構造及び活動の三つから構成される。

 

「生活機能」は3つあるという覚え方では間違います。

 

生活機能は,「心身機能・身体構造」「参加」「活動」で構成されています。

 

ここでは示しませんが,ここで間違った人は,ICFの図をもう一度目に焼き付けておく必要がありそうです。

 

2 活動は,能力と実行状況で評価される。

 

これが正解です。

 

この問題は,かなり難しいです。なぜなら,今なら評価はどのようになされるか,参考書などに書いてあるので勉強できますが,この当時はおそらく記述がなかったと思います。

 

ほかの選択肢を消去することで結果的にこの選択肢が残ります。

これが国家試験の怖いところです。

 

国家試験がとても難しく感じるのは,こういったタイプの問題が出題されるからです。解答速報で答えを確認するまで正解できたかどうか実感できません。

 

3 活動とは,生活や人生場面への関わりのことである。

 

活動は,「課題や行為の個人による遂行のこと」です。

 

今まで何度も何度も繰り返して出題されてきたものです。

 

活動と参加の区別が大切であることを教えてくれます。

 

4 個人因子には,促進因子と阻害因子がある。

 

個人因子には,促進因子も阻害因子もありません。個人因子は,その人そのものなので,こういったものがあると,その人を否定することにつながります。

 

促進因子と阻害因子があるのは,環境因子です。

 

 

5 参加制約とは,個人が活動を行うときに生じる難しさのことである。

 

参加制約は,「個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと」です。

 

「個人が活動を行うときに生じる難しさのこと」は,活動制限です。

 

〈今日の一言〉

 

国家試験は,まったく同じ表現で出題されることは,ほとんどありません。

 

しかし,ICFの用語は,厚生労働省が用いている用語がそのまま出題されています。

 

特に「活動」と「参加」は,区別しておくことが大切です。それがうまくできないことがそれぞれ「活動制限」「参加制約」となります。

2022年1月29日土曜日

脊髄は中枢神経,脊髄神経は末梢神経

中枢神経とは,多くの神経が集まっている神経です。


中枢神経には,大脳,間脳,小脳,脳幹,延髄,脊髄があります。


脳幹は,中脳,橋(きょう),延髄の順に並んでおり,その先に脊髄があります。


脳幹の並びは,覚えるのが大変ですが,中脳と延髄の橋渡しをする「橋」,つまり,この3つの中では,「橋」が真ん中にあると覚えるとばっちりです。


末梢神経は,中枢神経から全身に分かれて分布する神経です。


末梢神経には,脳神経と脊髄神経があります。


脳は,中枢神経

脳神経は,末梢神経


脊髄は,中枢神経

脊髄神経は,末梢神経


それでは今日の問題です。


第31回・問題2 体の各器官の構造と機能に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 副交感神経は,消化管の運動を亢進する。

2 脳幹は,上部から延髓・中脳・橋の順で並んでいる。

3 大脳の側頭葉は,視覚に関わる。

4 脊髓神経は,中枢神経である。

5 三半規管は,外耳と中耳の境目に位置する。


この問題が出題された当時,とても「やられた~」という気持ちがしました。


というのは,脊髄は,中枢神経ですが,脊髄神経は,末梢神経だからです。


脳神経外科の医師にこの問題を見てもらったことがありますが,「こんな引っ掛けを出して何の意味があるのだろう」と頭をかしげていました。


社会福祉士,精神保健福祉士は,医療スタッフではないので,人体の構造として出題するとすれば,このような出題のしかたになってしまうのかもしれません。


それでは,解説です。


1 副交感神経は,消化管の運動を亢進する。


交感神経と副交感神経は,同時に活発に活動することがありません。


交感神経が活発化すれば,副交感神経は鎮静化します。

交感神経が沈静化すれば,副交感神経は活発化します。


人が活動しているときは,交感神経は活発化します。

人が休んでいるときは,副交感神経が活発化します。


交感神経は,動物学的に言えば,敵を発見したとき,攻撃したり,逃げたりするために血圧を高めて,運動神経を活発化させます。


副交感神経は,体を休めているときに活発化して,消化管などに作用します。攻撃するときや逃げるときに,悠長に消化しているわけにはいかないからでしょう。


人の体はなんと面白いことでしょう。チコちゃんなら,どのように教えてくれるか気になるところです。

ということで「副交感神経は,消化管の運動を亢進する」は正解です。



2 脳幹は,上部から延髓・中脳・橋の順で並んでいる。


脳幹の順番は,中脳,橋,延髄の順で並んでいます。

中脳と延髄の橋渡しをする「橋」と覚えます。


3 大脳の側頭葉は,視覚に関わる。


側頭葉は,聴覚にかかわります。耳に近いから聴覚と覚えます。

後頭葉が視覚にかかわっています。


4 脊髓神経は,中枢神経である。


脊髄神経は,末梢神経です。

脊髄が,中枢神経です。


この問題が出題された当時,この選択肢を選んでしまった人は多かったのではないかと思います。


5 三半規管は,外耳と中耳の境目に位置する。


三半規管がうまく働かないとめまいを生じます。

ここからイメージできる人もいるかもしれませんが,三半規管が位置するのは,中耳です。

2022年1月28日金曜日

エリクソンの発達理論

エリクソンの発達理論は,人生を8つの段階に分けて,それぞれの発達課題を設定しているのが特徴です。

 

エリクソンによる発達段階の発達課題vs危機

乳児期(01歳) 基本的信頼 vs 基本的不信

幼児前期(13歳) 自立性 vs 恥・疑惑

幼児後期(36歳) 自主性 vs 罪悪感

児童期(711歳) 勤勉性 vs 劣等感

青年期(1220歳) 同一性獲得vs 同一性拡散

前成人期(2030歳) 親密 vs 孤立

成人期(3065歳) 世代性 vs 停滞

老年期(65歳以降) 統合 vs 絶望

 

訳し方によって,表現が異なるものもありますが,おおよそのことだけを理解していれば何とかなります。

 

それでは,今日の問題です。

 

 

31回・問題1 次の年齢のうち,エリクソン(EriksonE.)の発達段階に関する理論にいう「アイデンティティ」が発達課題となる年齢として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1  3歳

2  7歳

3 15歳

4 30歳

5 50歳

 

発達段階がわからなくても,落ち着いて考えると正解できそうな感じがします。

 

正解は,選択肢3です。つまり15歳です。

 

15歳は,日本で言えば中学3年生です。

 

自分が何者なのか,何をすべきなのか,どこに向かおうとしているのか,いろいろ悩む時期です。

これがアイデンティティ(同一性)です。

 

かつて校内暴力が激しかった時代があります。

そんな時代に,尾崎豊さんは「15の夜」という歌を作りました。

 

この歌の歌詞を改めて見てみると,アイデンティティを確立するために,もがいている様子が描かれています。

 

少年の犯罪事件が減少している昨今,「盗んだバイクで走り出す」なんて歌詞を理解できる若者はほとんどいないかもしれませんが,時代を映し出した名曲だと思います。(盗みを肯定しているわけではありません)

 

エリクソンの8つの発達課題で確実に覚えておきたいのが,アイデンティティです。

 

アイデンティティが出題されたら,「15の夜」を思い出すと良いと思います。たとえが古いですね。

 

ということで,今日から第31回国試問題に取り組んでいきたいと思います。

改めましてどうぞよろしくお願いします。

2022年1月27日木曜日

最後にしなくても良いこと

学校の先生や試験対策の先生は,「〇〇白書に目を通しておきましょう」と言います。


こういった先生方は,その分野に詳しいので,白書や報告書を見ても,どこに着目すれば良いかわかっていることでしょう。


しかし,そうでない人は,1回くらい目を通したところで,頭に残るのはとても難しいことのように思います。

そんなに簡単に頭に残せるなら,それ以外の勉強にこれほど苦しむことはないでしょう。


ということで,最後にしなくても良いことは,これから新たに白書や報告書に目を通すことです。


目を通したところで,その問題が出題されて正解できるようには思えないです。

そう思いませんか?


もし,どこが出るのか知っているなら,白書に目を通しなさいではなく,白書のどこどこを見なさい,と具体的に伝えてもらいたいものです。


「目を通す」は,それだけ重要なことです。


試験が終わってその白書等が本当に出題されたら「ほら,言ったように白書が出た」とその先生は満足することでしょう。


そんな満足のために振り回されたくはありません。


これからでも目を通しても良いと思われるのは,出題頻度が極めて高く,ボリュームの少ないものです。


例えば,

成年後見関係事件の概況

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2020/20210312koukengaikyou-r2.pdf


国民医療費の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/19/dl/data.pdf


といったものでしょう。


しかし,これらでさえ,今までの勉強で学んできたものです。


ということで,やっぱり白書や報告書は目を通すことは,これからの限られた時間の中で行う優先度は低いと言えます。


これからの時間で行いたいのは,出題頻度が高いものを確実に覚えることです。

例えば,民生費,社会保障給付費などです。


民生費

https://fukufuku21.blogspot.com/2021/10/blog-post_16.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2020/12/blog-post_9.html


社会保障給付費

https://fukufuku21.blogspot.com/2021/10/blog-post_21.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2017/11/blog-post_29.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2018/07/889.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2020/12/blog-post_15.html


ほかにもいっぱいありますが,ここだけに時間をかけるはもったいないので,このくらいでやめておきたいと思います。


しかし,こういった出題頻度か高いところを覚えているか。そうでないのかが,最後の最後に大きな差となることだけは覚えていてほしいと思います。

2022年1月26日水曜日

最後にやるべきこと

国家試験が近くなってくると,焦りがますます高まってきます。

だからといって,何か特別な解消法があるわけではありません。

 

今までの勉強をひたすら繰り返すのみです。

 

この学習部屋もネット情報の一つですが,ネットやSNSで「〇〇が出そうだ」という情報を集めるのは,時間がもったいないように思います。

 

それがプラス1点になることもあるかもしれませんが,スタンダードなものを押さえていくほうが,国家試験に出る確率は高いと言えます。

 

たとえば,相談援助の「様々なアプローチ」,心理学の「心理療法」などがそうです。

 

これらが必ず次の国家試験に出題されるとは限りませんが,少なくとも第22回国家試験以降では,毎回必ず出題されています。


 相談援助の「様々なアプローチ」

アプローチ名

援助方法

・心理社会的アプローチ

状況の中の人」を基本概念として,心理社会的に課題のあるクライエントに対して,コミュニケーションを通して関わっていく。

・機能的アプローチ

ワーカーの所属する機関の機能を活用して,クライエントの意志で問題解決できるように援助する。

・問題解決アプローチ

クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する。

・課題中心アプローチ

クライエント自らが問題を解決するための課題を設定し,あらかじめ決められた期間の中で課題を達成することを目指す。

・危機介入アプローチ

危機状態に陥っている人に対して早期にかかわり,危機に対して対処能力を高める。

・行動変容アプローチ

学習理論を活用して,クライエントの問題となる行動を消去や強化することにより,問題行動全体の変容を図る。

・エンパワメントアプローチ

クライエントが抑圧された状況を認識して,潜在能力に気づいて,対処能力を高められるようにかかわる。

・ナラティブアプローチ

クライエントが語るストーリーを重視して,新たな意味の世界を創り出すことを援助する。

・解決志向アプローチ

クライエントが抱く解決のイメージを尊重し,その実現に向けてクライエントの社会的機能を高めることを目指す。

・フェミニストアプローチ

女性にとっての差別や抑圧などの社会的な現実を顕在化させ,個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指す。

・実存主義アプローチ

利用者が他者とのつながりを形成し,疎外状態から解放されることに焦点を当てる。

・エコロジカルアプローチ

「人と環境」の交互作用に着目して援助する。


アンダーラインを引いているところが,それぞれのポイントです。国家試験では,そこを手掛かりに問題を解きます。

こういったものを知っていると国家試験では,凡ミスは防ぐことができます。


「心理療法に関する出題は100%」の記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2018/03/311001.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2018/03/311002.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2018/04/311003.html


〈今日の一言〉

 

社会福祉士の国家試験の特徴は,出題範囲が広いことです。

ヤマを張って国試に臨んだところで,合格基準点に到達するのはかなり困難です。

 

その点,まじめに勉強に取り組んできた人は,合格する権利があります。

 

それを信じることがとても重要です。

2022年1月25日火曜日

年号を覚える必要はあるの?

現在(2022年1月時点)の社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験は,年号(2000年など)を正しく覚えていないと正解できない問題はほとんどありません。


おおよその時代がわかっていれば十分です。


それにもかかわらず,年号を必死で覚えようとしている人がいるようです。


年号を覚える必要があるとすれば,おおよその時代を知るためでしょう。


戦前の出来事なのか

戦後の出来事なのか


昭和20年代の出来事なのか

昭和30年代の出来事なのか


おおよその時代とは,こういったきりの良い区切りです。


年号を正しく覚えないと解けない問題が出題されたのは,第21回国家試験が最後です。その問題を紹介します。


第21回・問題101 児童福祉分野の法律等の制定に関する次の記述のうち,年代の古い順に並べたときに第3番目に位置するものとして,正しいものを一つ選びなさい。

1 「児童手当法」が制定される。

2 「児童扶養手当法」が制定される。

3 「児童虐待の防止等に関する法律」が制定される。

4 「次世代育成支援対策推進法」が制定される。

5 「児童憲章」が制定される。


こんなタイプの問題は,見たことないでしょう?

因みに並べ替えるとこんな感じになります。


5 「児童憲章」が制定される。  1951年・昭和26年

  ↓    ↓

2 「児童扶養手当法」が制定される。  1961年・昭和36年

  ↓    ↓

1 「児童手当法」が制定される。 1971年・昭和46年

  ↓    ↓

3 「児童虐待の防止等に関する法律」が制定される。 2000年・平成12年

  ↓    ↓

4 「次世代育成支援対策推進法」が制定される。 2003年・平成15年


第21回よりも前にこの出題スタイルのものはよくありました(紹介すればいっぱいありすぎること,紹介する意味がないので,ここではほかに紹介しません)。

しかし,第21回を境になくなりました。


注目すべきなのは,第22回以降はこういった問題は出題されていないということです。

第22回は,平成19年カリキュラム改正の第1回国試です。

このカリキュラムによる国試では,年代を学び変える問題のようなスタイルの出題は不適切だとされたのではないでしょうか。


社会福祉振興・試験センターは,出題する際のルールをいろいろ取り決めているのではないかと想像しています。


そうでなければ,急に方向が変わることは考えられません。


そういったことから,重要なのは,年号を覚えることではなく,その内容を覚えることだと思うのです。


年号がわからなければ解けない問題が適切だとされていたなら,第22回以降も必ず出題されていたはずです。


年号は覚えられなくても大丈夫です。


ただし,これは平成19年改正のカリキュラムによる国家試験の場合です。令和元年改正のカリキュラムによる国家試験がどのようなルールを取り決めているのかは,第37回以降の国家試験を見てみなければわかりません。

しかし,年号についての取り決めはおそらく継続されます。一度不適切だとみなされていたものが復活させる必然性がないからです。

「点」で見ていてもよくわかりませんが,5年,10年,20年という長いスパンで流れを見ていると見えてくることもあります。それが私たちチームfukufuku21の強みだと言えるでしょう。

2022年1月24日月曜日

国家試験の科目の出題順と自己暗示

現時点(2022年1月)での国家試験の最初の3科目は,以下のように並んでいます。


①人体の構造と機能及び疾病

②心理学理論と心理的支援

③社会理論と社会システム


この順番は,アセスメントする時の視点である


身体的(バイオ)・心理的(サイコ)・社会的(ソーシャル)モデル


に基づいているものです。


これは,WHOによる健康の定義


健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。


につながっています。


このため,第37回国試から始まる新しいカリキュラムでの出題もおそらく同じになるのではないかと考えています。


ちゃんとした根拠のある意図に基づいているからです。


第21回以前の国家試験は,以下のように並んでいました。


第1~10回(第1回と第2回の国家試験問題は非公開だったため,明確ではない)

①社会福祉原論

②老人福祉論

③障害者福祉論


第11~21回(精神保健福祉士が創設されたため)

①社会福祉原論

②社会保障論

③公的扶助論


今,改めて見ると不思議な並びです。


いずれにせよ,最初は社会福祉原論となっています。この科目は,現在の「現代社会と福祉」,そして新しいカリキュラムの「社会福祉の原理と政策」にあたります。


平成19年カリキュラム改正の前の最後の国家試験である第21回での第1問は,以下の問題です。


第21回・問題1 我が国の社会福祉の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 明治維新の直後に制定された恤救規則は,イギリスの救貧法をモデルに制定され,救恤場を設置し,院内救済を原則とした。

2 日清戦争の前後には,労働者の貧困や都市下層社会の問題が発生し,政府は,救貧行政の強化を図るために,窮民救助法を制定した。

3 日露戦争後には,政府は,地方行政による救貧行政の進展を図るために,感化救済事業講習会を開催し,防貧だけでなく救貧の必要性を強調した。

4 第一次世界大戦末期には,物価高騰による生活苦を背景に勃発した米騒動が,社会連帯責任を強調した社会事業行政を発展させる一因となった。

5 日中戦争が全面化した時期には,政府は,軍人の保護を目的として,戦時厚生事業を行い,傷病軍人対策として廃兵院法を制定した。


多くの人が苦手とする歴史問題です。


この問題の正解は,選択肢4です。


4 第一次世界大戦末期には,物価高騰による生活苦を背景に勃発した米騒動が,社会連帯責任を強調した社会事業行政を発展させる一因となった。


問題に対する解説はしませんが,言いたいことは,とても難しい問題が第1問になっていたことです。


最初の問題でペースが崩されて,自分を見失ったまま,国家試験が遂行していくことにもなりかねません。


それに比べて直近の国家試験では,以下の問題が第1問です。


第33回・問題1 人の成長と老化に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 生後2か月では,寝返りが打てる。

2 思春期には,第一次性徴が出現する。

3 青年期の終わりは,身体の成長が最も著しい時期である。

4 20歳頃には,生殖器系の成長が最も著しくなる。

5 老年期には,収縮期血圧が上昇する。


この問題の正解は,選択肢5です。

5 老年期には,収縮期血圧が上昇する。


収縮期血圧は一般に言われる最高血圧であることがわかっていれば,知識なしでも正解でそうな問題でしょう。


今の国家試験が簡単だということではありません。今も以前も合格するのは難しい試験であることには変わりはありません。


しかし,大きく違うのは,第1問にあたる科目です。


人体の構造は,知識なしでも正解できる問題が含まれるので,第1問が正解できなかったとしても,そのあとで挽回できます。


国試合格のために重要なことは


強い気持ちで国試に臨むこと


そのために,自己暗示が必要です。


自分は大丈夫だと,自分に言い聞かせること


これができた時,国試合格への道は,大きく開かれます。


正しい努力は必ず報われるのが今の国家試験です。

2022年1月23日日曜日

医療観察制度

 今回は,医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)を取り上げます。

 

医療観察法の目的 

心神喪失等の状態で重大な他害行為(他人に害を及ぼす行為をいう)を行った者に対し,その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより,継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって,その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り,もってその社会復帰を促進すること。

 

医療観察法が対象とする犯罪行為

殺人

放火

強盗

強制性交等

強制わいせつ

傷害

 

これらの行為を行った者が不起訴,あるいは無罪になった場合,検察官が申立てして,地方裁判所は裁判官と精神保健審判員(名簿に登録された精神保健指定医の中からその都度選任する)の合議によって,入院決定,通院決定,不処遇を審理します。

 

入院(医療観察)は,指定入院医療機関で行います。病院の設置主体は,国,都道府県,特定地方独立行政法人に限定されています。

 

通院は,民間病院でも指定を受けることができます。通院の期間は原則3年(延長は2年)です。通院期間中は,保護観察所の社会復帰調整官による精神保健観察を受けます。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題150 「医療観察法」の医療観察制度に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 精神保健観察は,刑法上のすべての犯罪行為に対して適用される制度である。

2 医療観察は,厚生労働省で定める基準に適合する私立病院において医療を行う制度である。

3 精神保健観察は,必要な医療を受けているか否か及びその生活の状況を見守る制度である。

4 医療観察は,精神保健審判員の判断によって,退院を許可することができる制度である。

5 医療観察は,指定入院医療機関の管理者が,入院の申立てをする制度である。

 

この問題が出題されたときのことをよく覚えていますが,このように出題するのか,とびっくりしました。

 

というのは,正解は,選択肢3

 

3 精神保健観察は,必要な医療を受けているか否か及びその生活の状況を見守る制度である。

 

精神保健観察は,入院によらない(つまり通院)医療を受ける決定がされた際に実施されることは知っていましたが,その目的まで考えたことがなかったからです。

 

改めて考えてみると,統合失調症の場合,治療をしっかり受けていれば,今の抗精神病薬はとてもよいので,病状は安定します。

 

医療を受けているかどうかを確認するということは,とても重要なのだと思います。

 

ライシャワー事件を受けて,精神衛生法が改正されたとき,現在の精神通院医療につながる「通院医療費公費負担制度」が創設されたことを考えると納得できます。

 

それはさておいて,医療観察法の精神保健観察は,通院の決定を受けた場合に実施されるものです。

 

ほかの選択肢も見てみます。

 

1 精神保健観察は,刑法上のすべての犯罪行為に対して適用される制度である。

 

「すべての」という表記があるので,正解ではないと判断できますが,対象となるのは,前説で紹介したように,

 

殺人

放火

強盗

強制性交等

強制わいせつ

傷害

 

です。

 

強制性交等は,以前の強姦から変わったものです。

 

強姦は,男性 → 女性 というものになりますが,

強制性交等は,男性 ⇔ 女性 ということになります。

 

2 医療観察は,厚生労働省で定める基準に適合する私立病院において医療を行う制度である。

 

医療観察,つまり入院による処遇の場合,実施されるのは,国,都道府県,特定地方独立行政法人で,指定を受けた医療機関に限定されています。

 

私立病院が指定を受けられるのは,通院です。

 

4 医療観察は,精神保健審判員の判断によって,退院を許可することができる制度である。

 

精神保健審判員がかかわるのは,当初裁判の際の合議です。

 

退院を許可するのは,地方裁判所です。

 

5 医療観察は,指定入院医療機関の管理者が,入院の申立てをする制度である。

 

申立てを行うのは,検察官です。

2022年1月22日土曜日

更生緊急保護

 更生緊急保護は,保護観察に付されていない者に対して実施する緊急的な保護です。

 

〈保護内容〉

・金品の給与,又は貸与。

・宿泊場所の供与。

・医療、療養、就職,教養訓練の援護。

・職業の補導。

・生活環境の改善又は調整 など

 

〈期間〉

6か月を超えない範囲内。必要な場合はさらに6か月を超えない範囲で延長することができる。

 

〈保護の実施者〉

保護観察所の長が自ら行う,あるいは適当な者に委託して行う。

 

〈保護の開始〉

対象となる者からの申し出があり,保護観察所の長が必要だと認めた場合に,保護を実施する。

 

国家試験で問われるのは,こんなところです。

 

更生緊急保護が保護観察に付されていない者を対象としないのは,保護観察に付されていない者には,以下のように「応急の救護」という更生緊急保護と同等の制度があるからです。

 

保護観察に付されている者

応急の救護

保護観察に付されていない者

更生緊急保護

 

それでは今日の問題です。

 

22回・問題149 更生緊急保護に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 更生緊急保護は,保護観察所長が自ら行い,又は更生保護法人やその他の適当な者に委託して行う。

2 更生緊急保護は,その対象となる者が刑事上の手続き又は保護処分による身体の拘束を解かれた後2年を超えない範囲内において行うものとされている。

3 少年院から退院した者,又は仮退院を許され保護観察に付されている者は,更生緊急保護の対象となる。

4 更生緊急保護は,対象となる要件を備えた者についてその再犯を予防するために必要があると検察官が認めたときに限り,行うものとされている。

5 更生緊急保護の対象となる者が,専門学校進学のための十分な資金を持たない場合,更生緊急保護で給与することができる。

 

この問題は,平成19年のカリキュラム改正があった後,初めての国試で出題されたものです。

 

これまで第22回国試に着目して取り上げてきた理由は,第22回国試の出題内容は,その後の国試をどのように出題していくかを示したものだからです。

つまり第22回国試の問題をベースにして,その後の問題が出題されてきたと言ってもよいでしょう。

 

今となっては,第22回国試問題を見てもそれほど難しく感じませんが,その試験を受験した人にとって,とてつもなく難しく感じたと思います。

過去問がなかったからです。その頃のことを考えると,今はやる気と根気があれば,その当時よりもかなり確実に合格することも可能です。

 

近年,合格基準点が上がってきているのは,勉強しやすくなっているからだと言えます。

 

それでは,今日の問題の解説です。

 

1 更生緊急保護は,保護観察所長が自ら行い,又は更生保護法人やその他の適当な者に委託して行う。

 

これが正解です。

 

2 更生緊急保護は,その対象となる者が刑事上の手続き又は保護処分による身体の拘束を解かれた後2年を超えない範囲内において行うものとされている。

 

更生緊急保護の期間は,6か月を超えない範囲内で行います。必要な場合は,さらに6か月を超えない範囲で,延長することができます。

 

3 少年院から退院した者,又は仮退院を許され保護観察に付されている者は,更生緊急保護の対象となる。

 

保護観察に付されている者は,更生緊急保護ではなく,応急の救護の対象となります。

 

これが,更生緊急保護は保護観察に付されている者を対象としない制度である理由です。

 

4 更生緊急保護は,対象となる要件を備えた者についてその再犯を予防するために必要があると検察官が認めたときに限り,行うものとされている。

 

更生緊急保護は,対象となる者からの申し出があり,保護観察所の長が必要だと認めた場合に,保護を実施します。

 

5 更生緊急保護の対象となる者が,専門学校進学のための十分な資金を持たない場合,更生緊急保護で給与することができる。

 

更生緊急保護では,金品の給与もありますが,それは,生活するために必要なお金です。

 

専門学校進学のお金が必要なら,働いてその資金を貯めなさい,ということになることでしょう。

2022年1月21日金曜日

仮釈放のしくみとその許否にかかわる機関

保護観察は,更生保護制度の中心をなすものです。

 

保護観察の対象は,以下のとおりです。

 

保護観察の対象

対象

良好措置

不良措置

1号観察

保護観察処分を受けた少年

仮解除

少年院送致など

2号観察

少年院から仮退院した少年

退院

仮退院の取消し

3号観察

刑事施設から仮釈放された者

なし

仮釈放の取消し

4号観察

保護観察付き執行猶予者

仮解除

執行猶予の取消し

5号観察

婦人補導院から仮退院した者

なし

仮退院の取消し

 

5号観察は,売春防止法で規定されています。

 

それ以外は,更生保護法が根拠法です。

 

このうち,今日のテーマは,仮釈放です。

 つまり3号観察ということになります。

 

仮釈放の審理は,改悛(かいしゅん)の状があり,有期刑についてはその刑期の3分の1,無期刑については10年を経過したのちに,地方更生保護委員会が行います。

 

仮釈放の手続きは,基本的には以下のようになります。

 

①刑事施設の長は,収容されている者が規定された期間を過ぎると,地方更生保護委員会にその旨を通告します。

  ↓  ↓

②地方更生保護委員会は,その通告によって,仮釈放の許否の審理を行います。

 

「基本的」というのは,通告があってもなくても,仮釈放の許否の審理を開始することができるからです。

 

審理する際,地方更生保護委員会は,刑事施設の長の意見を聴かなければなりません。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題148 事例を読んで,この場合の法律関係に関する次の記述のうち,仮釈放の手続として,正しいものを一つ選びなさい。

〔事例〕

 裁判所によって3年の懲役刑の言渡しを受けた受刑者が,まじめに刑務所生活を送り,改悛の状があると評価され,2年を経過したところで,仮釈放の手続がとられることになった。

1 仮釈放は,検察官が許可した場合に許される。

2 仮釈放は,地方更生保護委員会の決定があれば許される。

3 仮釈放は,裁判員の合意があれば許される。

4 仮釈放は,裁判所の判断があれば許される。

5 仮釈放は,矯正施設の長が認めれば許される。

 

この事例の受刑者は,改悛の状があると評価されています。

そして刑期は3年です。2年を経過した,ということなので,3分の2を経過したということです。

 

刑期が3年なので,最短では1年を経過したところで仮釈放の審理が開始されてもよかったのでしょうが,この人はおそらくその時点ではまだ改悛の状があるとは評価されなかったのでしょう。

 

しかし,この時点では,仮釈放が許されるための基準はとりあえずクリアしています。

 

さて,仮釈放はどこが決定するのでしたか?

 

正解は,選択肢2です。

 

2 仮釈放は,地方更生保護委員会の決定があれば許される。

 

仮釈放の許否の審理は,地方更生保護委員会の取り扱い事務です。


仮釈放した者が保護観察で不良だった場合,仮釈放が取り消されることもあります。それを不良措置といいます。


<今日の一言>


上記の表で,3号観察は,良好措置がありません。その理由は,仮釈放の途中で本出所することを認めると刑期が短くなってしまうからです。

なお,5号観察も良好措置がありません。この理由は,婦人補導院の入院期間は6か月と短いためです。5号観察も保護観察の対象となりますが,国家試験で出題されることはないと言ってもよいので,ほとんど覚える必要はありません。

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